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丹波篠山圏域在住高齢者における生活習慣とフレイルに関する学際的研究

​ 加齢に伴う機能変化や生理的な予備能力の低下により健康障害を招きやすい状態はフレイル(frailty)と呼ばれ、特に高齢期における自立度の低下、要介護状態に陥る原因として着目されています。フレイルとは、単に身体的機能の低下だけで評価されるものではなく、精神的、栄養学的、社会的な脆弱性を加味して多面的にとらえるべきものですが、その診断法はまだ確立していません。また従来の研究ではフレイルの一側面である、サルコペニア(sarcopenia=筋肉減少症)、うつ傾向や軽度認知機能障害(Mild cognitive impairment = MCI)などそれぞれ専門分野ごとに研究されてきました。しかし、高齢者では身体・生理機能と心理的側面、あるいは環境的要因は相互に影響して自立度の低下や生命予後に関与しています。そこでフレイルの発症要因や農村部におけるその表現形態のスペクトラム、さらにフレイルの診断に有用なバイオマーカーを明らかにすること、最終的には高齢者のQOLを損なう重要な原因であるフレイルを予防する方法を開発すること、多くの人が幸福を感じられる高齢期の達成に寄与する要因を同定することを目指したコホート研究を立ち上げることにしました。

 兵庫医科大学の分院であるささやま医療センターは、兵庫県中東部の篠山市中心部に位置しています(図4)。農業と観光業を主産業とする篠山市の人口は43千人で、65歳以上高齢者人口は30%に達しています。我々はささやま医療センターを拠点とし、兵庫医科大学のみならず、兵庫医療大学のリハビリテーション学を専門とする研究家からなる学際的研究チームを組織し、丹波篠山圏域在住高齢者の身体的機能の変化と、精神的、栄養学的、社会的な脆弱性との相互関係や時間的分布を包括的に検討していきたいと考えています。

 農村地域では、都市部より早く超高齢化が進行しており、農村部在住の高齢者におけるフレイルの実態やサルコペニアとMCIとの関連に関する知見の集積は、今後急激に高齢化が進行する都市部におけるフレイル対策を立案する上でも極めて有用と考えられます。また長寿先進国である本邦において、健康長寿達成の鍵となる生活習慣や環境要因を解明していくことは、今後高齢化社会に直面する海外諸国にとっても極めて関心の高いテーマとなることでしょう。

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