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2023年3月17日
今野さんの論文(Am J Physiol Heart Circ Physiol. )が公開されました。

性別による老化関連T細胞の振る舞い:内臓脂肪組織の慢性炎症におけるエストロゲンの役割

 

    本研究では、食餌誘導性肥満モデルマウスを用いて、内臓脂肪の蓄積、糖代謝異常、および老化関連T細胞の内臓脂肪組織浸潤の性差に関して調べました。研究は3つのフェーズに分けられました。

フェーズ1では野生型マウスを用いて、高脂肪食とコントロール食で飼育しました。オス(♂)マウスでは早期からより高度な糖代謝異常とインスリン抵抗性が認められましたが、性腺周囲に蓄積した内臓脂肪の重量には性差はありませんでした。

フェーズ2では、女性ホルモン(エストロゲン)の関与を調べるために、卵巣摘出手術を行い、エストロゲンを枯渇させたマウスを用意しました。これにより、体重と内臓脂肪の重量が増加する傾向が観察されました。特に、高脂肪食で飼育されたマウスでは、エストロゲンの枯渇により老化関連T細胞の浸潤が増加しました。

フェーズ3では、フェーズ2で得られた結果を基に、エストロゲンの補充療法を行い、内臓脂肪への老化関連T細胞の浸潤を減少させることが試みられました。

    高脂肪食による内臓脂肪蓄積では、オス(♂)マウスはメス(♀)マウスよりも早い段階で内臓脂肪に慢性的な炎症が起こり、重度の糖代謝異常が引き起こされることがわかりました。内臓脂肪組織への浸潤細胞の調査では、老化関連T細胞が高脂肪食飼育によるオス(♂)マウスとメス(♀)マウスの両方において増加していることが明らかになりました。また、制御性T細胞の浸潤はメス(♀)マウスでは低いが、オス(♂)マウスでは顕著に増加しており、慢性炎症がオス(♂)マウスで既に発生していることを示しています。さらに、老化関連T細胞の浸潤は、卵巣摘出による性ホルモンの減少によって増加し、エストロゲン補充療法によって減少することが示唆されました。

    今後は全身性または細胞特異的なエストロゲン受容体の欠損マウスを用いて、エストロゲンを介した制御メカニズムを明らかにしていきます。並行して、男性ホルモンが免疫細胞動態に及ぼす影響に関する研究を行い、性ホルモンやそのモデュレイターによる免疫細胞制御法を確立することも目指しています。

​論文リンク

https://journals.physiology.org/doi/full/10.1152/ajpheart.00469.2022

​論文解説

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